施術決定の不確実性:正解ではなく選択肢です
がん治療には標準ガイドラインがありますが、肌の施術にはありません。正解のない決定をAIがどう手助けすべきかについての記録です。

同じ悩みで3つの皮膚科に行くと、3つの異なる提案を受けることがあります。ある医師はレーザーを、ある医師はリフティングを、ある医師はまだ施術は必要ないと言うかもしれません。この経験をすると混乱します。誰が正しいのだろうか。今日はその問いについての話です。結論から言えば、3人とも間違っていない可能性が高いのです。
がん治療にはガイドラインがあります
医学の多くの領域には、標準治療のガイドラインがあります。がんが代表的です。がん種と病期が決まれば国際ガイドラインが推奨する治療の順序があり、世界中の医師がおおむねその枠の中で動きます。私がLunit(ルニット)で行った予後予測の研究も、こうした標準化された体系があったからこそ可能でした。
ところが肌の施術の世界には、このような絶対的なガイドラインがありません。同じしわを前にしても、推奨されるひとつの標準施術は存在しません。これは医療の未熟さではなく、この領域の決定がもともとそういう構造だからです。
施術の決定は3つが交わる地点です
施術の決定には、肌の状態だけが入るわけではありません。少なくとも3つが一緒に働きます。
- 肌の状態:どの指標が、どれだけ、どの部位で変わったか
- 医師の経験:どの施術に熟練していて、どの機器を扱ってきたか
- 顧客の好み:回復期間をどれだけ受け入れられるか、予算は、痛みへの敏感さは
同じ肌でも、ダウンタイムを取れない会社員と時間に余裕のある人とでは、最善は異なります。同じ施術でも、それを数百回行ってきた医師とそうでない医師とでは、結果が異なりうるのです。3つの皮膚科が異なる提案をする理由が、ここにあります。それぞれ異なる経験と異なる前提の上で、それぞれ妥当な答えを出したのです。
だから別の方式のAIが必要です
ここで一般的な医療AIとの違いが生まれます。診断AIは、ひとつの正解を当てるように学習されます。がんかどうかのように、正解があると考えられている問題だからです。しかし施術の決定のように正解が複数ある問題に同じ方式を使うと、AIは複数の妥当な選択肢のうちひとつだけを正解のように語ることになります。それは助けではなく歪みです。
以前私は、重症度評価において「複数の専門家の判断の分布」を学習する話をしました。施術の決定はその問題の拡張版です。AIが学ぶべきなのはひとつの正解ではなく、この肌の状態で実際に選ばれるさまざまな可能性と、その文脈です。
データもそれだけ広がらなければなりません
こうしたAIをつくるには、データから変わらなければなりません。一人の医師、一つの機関から出たデータで学習すれば、AIはその医師のスタイルを学ぶだけです。多様な医師と医療機関の決定が含まれてこそ選択肢の幅が学習され、さらに国ごとに好まれる施術や機器が異なるため、グローバルデータへの拡張まで必要になります。
私たちが向かおうとしている方向がこれです。INSKINVIEWは施術を処方する道具ではなく、自分の肌の状態でどんな選択肢が存在するのかを示す道具であるべきだと考えています。正解は結局、医師と顧客が向き合って決めるものであり、データがすべきことは、その対話の出発点をつくることだからです。